赤血球沈降速度(赤沈、ESR)

赤血球沈降速度(赤沈、以下ESR)は、感染症、癌および自己免疫疾患(側頭動脈炎や全身性血管炎)などの状態に関連する炎症を検出するのに有用な、比較的簡便で非特異的な試験である。

ESRの上昇は炎症の存在を示しているが、炎症が体内のどこにあるのか、何が原因でそれが引き起こされているのかを正確には判断できない。そのため非特異的な検査であるとされている。またESRは、炎症以外の他の状態によっても影響される可能性がある。そのため通常は、CRP(C反応性タンパク質)検査などと組み合わせて使用​​される。

赤血球沈降速度の検査目的

ESRは、抗凝固処理された血液をウェスターグレン(Westergren)チューブと呼ばれる直立チューブに入れ、赤血球が落下する速度を測定し、mm/hで報告される。

ESRの正常値(1時間値)は、男性:2〜10mm/h、女性:3〜15mm/hである。

ESRは炎症の非特異的マーカーであり、他の要因の影響を受けるので、患者の既往歴、および他の検査結果と共に評価される必要がある。ESRと臨床所見が一致すれば、疑わしい診断の確認や除外に利用できる。

逆に、特定の疾患の症状を伴わないESRのみが上昇した状態では、その疾患を除外するのに十分ではない。なぜなら、中等度のESR上昇は炎症はもちろん、貧血、感染、妊娠、加齢などでも起こりうるからである。

ESRがかなり上昇しているのであれば、通常、多発性骨髄腫やリウマチ性多発性筋炎、側頭動脈炎、全身エリテマトーデス、慢性関節リウマチなど、重度の免疫疾患なども考えられる。これらの所見では、ESRが100mm/h以上に上昇することがある。

赤血球沈降速度が亢進する原因

ESRは、主としてフィブリノーゲンと、沈降に抵抗する因子、すなわち赤血球の負電荷(ゼータ電位)との間のバランスによって決定される。

つまり、炎症が存在する場合、血液中のフィブリノーゲンの割合が高いため、赤血球が互いに粘着し、連銭(スタック)を形成し、高密度化するためESRも亢進するというわけである。

免疫グロブリンが大量に分泌される病態が起きれば、免疫グロブリンがマイナスに荷電し反発し合っている赤血球同士の関係を妨害し、凝集させて連銭を形成させる。

また、もともと女性はESRが高くなる傾向があり、月経と妊娠は一時的な上昇を引き起こすこともある。

デキストラン、メチルドーパ、経口避妊薬、プロカインアミド、テオフィリン、ビタミンAなどの薬物によってもESRが上昇することがあり、一方アスピリン、コルチゾン、キニーネはESRを低下させる。

赤血球沈降速度が低下する原因

基本的には上記と逆の減少が起きる病態を考えよう。

赤血球数の増加(多血症)や、白血球の増加、いくつかのタンパク質異常などで、赤血球の正常な沈降を阻害する状況となると、ESRは低下する。

多血症で赤血球数が多いと、それだけ赤血球同士の距離も近くなり、マイナスの荷電による反発作用も大きくなり、相対的に連銭(スタック)形成が起きにくくなるからである。

また、鎌状赤血球貧血における鎌状赤血球など赤血球の形状変化や、何らかの疾患で播種性血管内凝固(DIC)が起き、フィブリノーゲンが枯渇した場合でも、ESRは低下する。

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