癌性疼痛の発症機序とその外科的・内科的治療法のまとめ

癌性疼痛とは、実際または可能性のある組織損傷に起因する不快な感覚的および情動的な体験である。疼痛は常に、主観的な体験といえ、それを取り除くことは患者のQOLを大幅に向上させる。

癌性疼痛の発症機序

疼痛はその病態から、侵害受容性疼痛(体性痛/内臓痛)、神経因性疼痛、心因性疼痛に分類できる。ただし実際は、心因性疼痛は侵害受容性疼痛や神経因性疼痛をベースに発症していくことも考えられるので、ここでは省略する。

侵害受容性疼痛

侵害受容性疼痛は、無髄C線維と有髄Aδ線維によって脊髄に伝達される。伝導速度の速い有髄のAδ線維は鋭く針で刺しこむような局在性の痛みを、伝導速度が遅いC線維は不明瞭でうずくような鈍い痛みを伝える。

体性痛:骨転移や手術後早期の創部痛が代表的。疼痛部位は患部に限局し、叩打痛が病変に一致する。体動時に疼痛が増強することが多く、オピオイドによる疼痛緩和が可能。
内臓痛:交感神経支配を受ける臓器の損傷、および胸部、腹部内臓の浸潤や圧迫などにより生じる。「鈍い痛み」「深部の圧迫されるような痛み」と表され、疼痛部位がはっきりとせず、病巣から離れた部位に痛みが発生することがある(関連痛)

神経因性疼痛

腫瘍や治療による中枢神経または末梢神経の損傷により生じる。神経の支配領域に一致した痛みである。神経因性疼痛はモルヒネに反応しがたく、抗痙攣薬や抗鬱薬など鎮痛補助薬を必要とする(緊急の場合はモルヒネを一時的に使用する場合もある)。

「灼けるような」持続痛や、「槍で突きぬかれるような」、ぴりぴりとした電撃痛が混じることが多く、今まで特別大きな病気にかかった人でない限りなかなか想像しがたい痛みであるだろう。

癌性疼痛の治療方針

癌性疼痛管理の原則は、基本的にWHOの疼痛段階ラダーに従って、患者の痛みの程度に応じ段階的に行われる。薬剤の投与経路は経口が基本であるが、症状に応じて、経直腸、点滴、皮下注射などが用いられる。

非オピオイド鎮痛薬

非ステロイド性抗炎症薬(アセトアミノフェン、アスピリン)やCOX-2阻害剤などがすべての段階で用いられる。

オピオイド

オピオイドは弱オピオイドと強オピオイドに分類される。

  • 弱オピオイド:コデイン、ブプレノルフィン
  • 強オピオイド:モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル

オピオイドの副作用としては悪心・嘔吐、便秘、眠気などがある。しかし治療の中止をおこなうほど深刻なことはほぼなく、痛みに合った適切な量のモルヒネを投与すれば依存も形成されない。

鎮痛補助薬

鎮痛補助薬には抗鬱薬、抗てんかん薬、ステロイドなどが用いられる。

慢性痛を抱えている患者の多くが、鬱病に同時にかかることも少なくない。鬱病は、疼痛を増強し、また痛みへの注意を過度に集中させ、痛みを増強する可能性のある行動をすべて控えようとする行動につながることがある。この傾向を破局的行動と呼ぶ。

破局的行動を始めると、患者は自ら自発的行動を制限するようになるため、それが褥瘡や廃用症候群、ADLの低下を招くことにつながる。したがって、抗鬱薬で、セロトニンやノルアドレナリンのプールを増やし破局的行動を予防するのだ。

また、患者が常に明るい未来に目標を持ち続け、そしてその目標を達成するためのモチベーションを高めるために支えていくのも患者の家族含めた医療チームのやるべきことでもある。

薬物療法以外の疼痛緩和ケア

外科的療法

脊髄圧迫による疼痛および切迫麻痺に対する脊椎管の除圧、病的骨折に対する固定術などがある。

放射線療法

痛みを伴う骨転移、腫瘍の脊髄圧迫による疼痛など、薬物治療では、制御できない場合の疼痛に使用される。放射線によって、悪性腫瘍のDNAに損傷を与えるか、疼痛を促進するような化学物質の生成を阻害することができる。 ラジオアイソトープを用いた放射性医薬品では特定の腫瘍を標的とした治療で、正常細胞になるべく影響を残さないような治療も可能となる。

ホルモン療法による疼痛緩和

  • 乳癌に対する抗エストロゲン療法:抗エストロゲン薬(タモキシフェン、トレミフェン、メピチオスタン)、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)
  • 子宮体癌に対するゲスターゲン療法
  • 前立腺癌に対するアンドロゲン除去療法:精巣摘出術、LHRHアゴニスト

麻酔科的処置による疼痛緩和

神経ブロックは、局所麻酔薬によって痛みの原因となる神経線維の一時的麻痺を引き起こし、痛みの伝達を一時的に阻害することができる。麻酔薬、ステロイドなどの薬剤を神経の上やその近傍に注射することで、通常数日間〜数ヶ月、長くて数年持続する。

神経ブロックで用いる薬剤は、リドカインなどの局所麻酔薬やステロイド、エピネフリン、オピオイドなど複数組み合わせて行う。エピネフリンは血管を収縮させて、穿刺の際の出血を抑えることと麻酔薬の拡散を遅らせる目的がある。

スポンサード・リンク
スポンサード・リンク