筋弛緩薬の作用機序と効果、副作用

筋弛緩薬は、それぞれの作用機序の相違により、中枢性筋弛緩薬と神経筋接合部をブロックする末梢性遮断薬(神経筋接合部遮断薬)に大別されています。

中枢性筋弛緩薬

ベンゾジアゼピン類やバクロフェンなどの中枢性筋弛緩薬は、錐体路の障害に起因する下位運動ニューロンの過剰興奮に対して、脊髄を含む反射経路に作用することで、反射性筋収縮を抑制する薬です。
脳卒中や痙性麻痺、脳性麻痺、多発性硬化症、脊髄障害などの痙縮による筋緊張の緩和に用いられています。
上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの違いは?

1.ベンゾジアゼピン類
ベンゾジアゼピン類では、ジアゼパムロラゼパムなどが有名です。脊髄において抑制性の神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)を有する介在ニューロンはシナプス前抑制を行っており、このニューロンが放出するGABAはGABAA受容体に結合し、シナプス前抑制を発揮するため、ベンゾジアゼピン類の薬はこの時の作用を増強させることで、筋収縮の抑制を示すと考えられています。

ジアゼパムはてんかん重積症に静注で用いられている薬でもありましたね。
抗てんかん薬の作用機序と効果、副作用

2.バクロフェンbaclofen
バクロフェン(リオレサール)はGABAと構造がよく似ているGABAB受容体のアゴニストで、これが受容体に結合することでそれを活性化し、活動電位の発生が抑制され、細胞内へのCa2+流入が低下します。その結果、興奮伝達物質であるグルタミン酸の放出も抑制されて、筋収縮が抑制されると考えられています。

副作用として、眠気、脱力感などの神経症状、悪心・嘔吐、食欲不振などの消化器症状が見られることがあります。

3.チザニジンtizanidine
チザニジン(テルネリン)はα2受容体に対し、アゴニスト作用を示す薬です。脳幹のアドレナリンニューロンは脊髄前角部に下行し、脊髄ニューロンの興奮性を高めていますが、チザニジンは脳幹のアドレナリンニューロン上に存在するα2受容体に作用して、このニューロンからのエピネフリンの放出を低下させることで、脊髄反射を抑制し、筋弛緩を起こすと考えられています。

4.エペリゾンeperisone、トルペリゾンtolperizone
〇〇ペリゾン(perisone)で共通しているエペリゾン(ミオナール)とトルペリゾン(ムスカルム)は、は中枢の単シナプスおよび多シナプス反射を抑制することで筋弛緩作用を示します。
副作用として、脱力感やめまい、眠気のほか、トルペリゾンではまれに肝障害を生じさせることがあります。

5.クロルベキサゾンchlorzoxazone
クロルベキサゾンは脊髄の多シナプス反射を選択的に抑制することで筋弛緩作用を示します。
副作用として、頭痛、めまいなどのほか、悪心・嘔吐、胃部不快感などの消化器症状を呈することがあります。

6.ダントロレンdantrolene
神経筋接合部遮断薬に分類されることもありますが、骨格筋の筋小胞体からのCa2+の放出を阻害し、興奮収縮連関を抑制することで筋弛緩作用を示します。全身麻酔の重篤な副作用である悪性高熱症や、抗精神病薬の服用によって起きる悪性症候群の治療薬に適用されています。
副作用として、肝障害や筋無力症などを呈することがあります。




末梢性遮断薬(神経筋接合部遮断薬)

神経筋接合部とは、運動神経の終末と骨格筋の接合部のことを指しています。運動神経終末部からはアセチルコリン(ACh)が放出されており、筋肉側にはニコチン性ACh(nACh)受容体が分布しており、リガンドとなるAChをキャッチしています。
受容体とAChが結合すれば、筋細胞膜に脱分極が発生して筋収縮が起こります。活動電位の発生から筋収縮に至る過程を興奮収縮連関といいます。
末梢性遮断薬はこの興奮収縮連関の過程のいずれかを阻害することで筋収縮を抑制し、その作用機序により非脱分極性遮断薬と脱分極性遮断薬に大別されています。

非脱分極性遮断薬

非脱分極性遮断薬は、AChがnACh受容体に結合するのを競合的に阻害することで、その作用を発揮します。これに属する薬には、d-ツボクラリン(クラーレの主成分)やパンクロニウム、ガラミンなどがあります。
非脱分極性遮断薬は、目・耳・足指(短筋)→四肢の筋→頚筋→呼吸筋の順番で興奮伝達を阻害し、最終的に呼吸困難に至らしめることも可能なため、古くは狩猟などで用いられていました。

1.d-ツボクラリンd-tubocrarine
作用持続時間は30分程度で、神経筋接合部遮断作用の他に、自律神経節のnACh受容体の遮断作用、肥満細胞からのヒスタミン遊離促進作用などもあり、低血圧や気管支喘息の副作用が投与の際に問題となります。
ちなみにクラーレという植物の主成分で、南米一帯の狩猟部族は何世紀にも渡って弓矢や吹き矢で用いてきており、その毒物の総称を「クラーレ」と読んでいるそうです。

2.パンクロニウムpancuronium
ツボクラリンと異なり、ステロイド骨格を有する薬物で、ツボクラリンに比して約5倍の強い筋弛緩作用を持っています。交感神経を軽度に興奮させるため、頻脈や軽度の血圧上昇が見られることがあります。

脱分極性遮断薬

脱分極性遮断薬は、AChと同様にまずnACh受容体に結合し、筋細胞を脱分極させ、筋収縮を起こします(phase Ⅰ)。ついで、肝臓で産生されるコリンエステラーゼによって分解されますが、このときの分解速度はAChよりも遅く、比較的長時間nACh受容体との結合状態を継続するため、nACh受容体は脱感作状態となり、筋細胞膜は時間の経過とともに再分極し、最終的に弛緩します(phase Ⅱ)。
脱分極性遮断薬に分類される薬物には、スキサメトニウム(サクシン)が挙げられます。

スキサメトニウムsuxamethonium
作用時間が短く、血中のコリンエステラーゼにより加水分解を受け、投与後数分以内で消失します。人工呼吸や気管内挿管を容易にするため麻酔前投与薬として使用されていますが、ハロタン(揮発性吸入麻酔薬)との併用で悪性高熱症が生じることがありますので、麻酔科臨床頻度は近年ロクロニウムに移り変わりつつあります。
その他の副作用として、不整脈、緑内障などが挙げられます。

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