神経性食思不振症(拒食症)の原因、症状、診断、治療

投稿日:2017年11月1日 更新日:

神経性食思不振症(拒食症)の原因、症状、診断、治療
神経性食思不振症(Anorexia nervosa:以下AN)とは、心理・社会的な影響により、異常なボディイメージを形成することで、摂食障害をきたし、著しい体重減少を呈する精神疾患である。この疾患の患者は、自身が客観的に非常に痩せているにもかかわらず、まだ自身の体重が多すぎると思い込み、さらに痩せるための様々な努力をする。痩せるために下剤を飲んだり、活発に運動したり、時に過食になり代償的に吐くなど、同居する家族や恋人には常軌を逸した行動でも、本人はそれで達成感を得ており、病識がないのが特徴的である。

著しい体重減少は、ただ見た目の変貌のみにあらず、それに伴うホルモンバランスの崩れにより、様々な合併症をきたす。例えば、不整脈、骨粗鬆症、視床下部性無月経、不妊症、若年性更年期障害、抑うつ、自傷行為などが見られる。

世界的に、ANは2015年時点で290万人になると推定されている。西側諸国では、女性の0.9%〜4.3%、男性の0.2%〜0.3%と、女性が男性に対して10倍近く多い。非常に致死率が高い精神疾患でもあり、10年以内に5〜20%は低栄養による感染症や不整脈により死亡する。

神経性食思不振症(拒食症)の原因

生物学的、心理的、発達的、社会文化的など様々な背景のリスク要因があるが、現代ではこれらが相互に複雑に関わり合って発症に至るケースも多い。

  • 生物学: どの遺伝子が関与しているかはまだはっきりしていないが、一部の人には食欲不振のリスクが高い遺伝的変化があると予想されている。AN患者の家族にはうつ病やアルコール依存、摂食障害が多いというデータがあり何らかの遺伝的要因の関与はありそうだ。
  • 心理学:AN患者は元来、完璧主義、強迫的な性格の特徴を持っている傾向にある。この性格をベースに、自身が客観的に非常に痩せているにもかかわらず、さらに高い次元の不安を抱き、より制限的な食事に従事しているのかもしれない。
  • 環境:雑誌やテレビなどで見かける西洋的ないわゆるモデル体型に触発されると、しばしばよりスリムなことが完成形であるというボディイメージを刷り込まれる。特に若い女性の間では、同年代の友達の圧力が欲望を助長させるケースも多い。

神経性食思不振症(拒食症)の症状

ANは、飢餓状態になるまで体重を減らそうとする摂食障害である。飢餓による栄養不良は、体内のすべての主要な臓器系において合併症を引き起こす可能性がある。たとえば低カリウム血症はANの主要徴候であり、血清カリウムの著しい低下は、異常な心調律、便秘、疲労、筋障害、麻痺などを起こしうる。

  • 極度の体重減少
  • 無月経(視床下部性)
  • 背中の濃い産毛
  • 摂食制限、また時に過食し自己誘発嘔吐
  • 過度の運動
  • 栄養失調
  • 低体温
  • 徐脈
  • 抑うつ、不眠症
  • 腹痛、便秘
  • 嘔吐または飢餓に起因するケトン性口臭
  • 慢性的疲労感
  • 電解質代謝異常(特に低カリウム血症)
  • 骨粗鬆症
  • 甲状腺機能低下

神経性食思不振症(拒食症)の診断

DSM-5

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」では、次の3項目を満たすと「神経性やせ症/神経性無食欲症」と診断される。

A 必要量と比べてカロリー摂取を制限し、年齢、性別、成長曲線、身体的健康状態に対する有意に低い体重に至る(有意に低い体重とは、正常の下限を下回る体重のことである)。

B 有意に低い体重であるにもかかわらず、体重増加または肥満になることに対する強い恐怖、または体重増加を妨げる持続した行動がある。

C 自分の体重または体型の体験の仕方における障害、自己評価に対する体重や体型の不相応な影響、または現在の低体重の深刻さに対する認識の持続的欠如。

病型

  • 摂食制限型:過去3ヵ月間、過食または排出行動(自己誘発的嘔吐、下剤の利用など)の反復的なエピソードがないこと。
  • 過食・排出型:過去3ヵ月間、過食または排出行動の反復的なエピソードがあること。

重症度

体格指数(BMI)は、ANの重症度の指標としてDSM-5で使用されている。

  • 軽症: BMI ≧ 17
  • 中等度: BMI 16〜16.99
  • 重度: BMI 15〜15.99
  • 最重度: BMI<15

神経性食思不振症(拒食症)の治療

ANの治療は精神療法が第一であり、低栄養に不随した合併症に対しては保存的治療を行う。

治療の最終目標は、(1)患者の体重を健康な状態に戻すこと、(2)痩せに関する異常な行動や考え方を修正すること、である。

ただし、とにかく食べろと強硬な姿勢を押しつければ、仮に体重を元にもどすことが出来ても、根本にある心理的な部分を修正していない限り再発の可能性もあり、逆効果にもなりうる。患者の背景の問題解決には、家族などの周囲のサポートも必要である。

また、慢性的な栄養障害がある状態に対して、急に栄養補給を行うと、心不全や呼吸不全、腎不全、肝機能障害などに至る再栄養症候群(RFS)を起こす可能性があるため、患者の再摂食のスタートはしっかりとプランを立てて適切に行う。

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