ADH不適合分泌症候群(SIADH)の病態、症状、診断、治療

投稿日:2017年11月17日 更新日:

ADH不適合分泌症候群(SIADH)とは、抗利尿ホルモン(ADH)であるバソプレシンが不適切に分泌されることによって低ナトリウム血症を起こす疾患である。

細胞外液(ECF)が増加しているにもかかわらずADHが持続的に出続けるため、血漿浸透圧(Posm)が低下する。レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系が代償的に抑制されるため尿量の低下はあまり見られず、細胞外液の水は細胞内へ移動するため浮腫も見られない。

SIADHの原因としては髄膜炎、脳炎、脳卒中など脳神経系疾患、ADHの異所性分泌が起きる肺小細胞癌、シスプラチンやビンクリスチン、シクロフォスファミドなどの抗腫瘍薬を主とした薬剤性によるものが挙げられる。

ADH不適合分泌症候群(SIADH)の原因

SIADHをきたす疾患は、異所性にADHを産生する腫瘍によるものと、下垂体後葉由来のAVP分泌亢進に大きく分けられる。ADH産生型の腫瘍は肺小細胞癌などの未分化癌に多く見られる。下垂体性後葉由来のものは、髄膜炎や脳炎、脳卒中など脳神経系疾患が原因であることや、脳腫瘍などの術後に二次的に起きる場合がある。また、シスプラチンやビンクリスチン、シクロフォスファミドなどの抗腫瘍薬が薬剤性SIADHを起こす場合もある。

中枢神経系疾患 髄膜炎
脳炎
外傷
脳梗塞・脳出血
くも膜下出血
脳腫瘍
Guillain-Barre症候群
肺疾患 肺炎
肺結核
肺アスペルギルス症
気管支喘息
異所性ADH産生腫瘍 肺小細胞癌
膵癌
薬剤 シスプラチン
ビンクリスチン
シクロフォスファミド
アミトリプチン
イミプラミン

ADH不適合分泌症候群(SIADH)の症状

SIADHの症状は、低ナトリウム血症による頭痛や嘔気である。血清Na値が110mEq/L以下に低下すると、意識障害や痙攣、仮性球麻痺などの重篤な水中毒症状を示す。

細胞外液の水は、細胞内へ移動するため浮腫はあまり見られず、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系が代償として抑制されるため尿量の低下も見られない。

ADH不適合分泌症候群(SIADH)の診断

SIADHの診断は血漿浸透圧の低下、低Na血症の臨床所見、検査所見に基づいている。

  1. 低ナトリウム血症:血清Na≦135mEq/L
  2. 血漿バゾプレシン値:血清≦135mEq/Lで、血漿ADHが測定可能
  3. 低浸透圧血症:血漿浸透圧(Posm)≦280 mOsm/kg
  4. 高張尿:尿浸透圧(Uosm)≧300 mOsm/kg
  5. ナトリウム利尿の持続:尿中Na濃度>20 mEq/L
  6. 腎機能正常:血清クレアチニン>1.2 mg/dl(腎性低Na血症の除外)
  7. 副腎皮質機能正常:早朝空腹時の血清コルチゾール>6 μg/dl(副腎皮質機能低下症の除外)

原疾患(肺小細胞癌や脳腫瘍)の有無や、血清レニン値の抑制、血清尿酸値の低下なども参考所見として有用。副腎機能低下症・甲状腺機能低下症、腎不全、心因性多飲を除外する。

ADH不適合分泌症候群の治療

  • 水制限:15〜20ml/kg/日以下
  • 食塩摂取:10g/日以上
  • ※ Naの静脈内投与:血清Na濃度125mEq/Lを目標に、緩徐に(1時間あたり1mEq/L,1日あたり8〜12mEq/Lが目安)慎重に行う。
  • ジメクロサイクリン:ADHの尿細管に対する作用を抑制

※ Naの急速な補正は橋中心性脱髄崩壊症候群を起こす可能性がある。Na値の上昇に伴う細胞内から細胞外への水の移行により細胞が萎縮を起こす病態で、非可逆的な意識障害や四肢の弛緩性麻痺、嚥下障害などをきたす。

補足:低Na血症の鑑別

低Na血症は細胞外液量(ECF)が①増加するタイプ、②減少するタイプ、③不変〜軽度増加のタイプに分けられる。

ECF増加の低Na血症

体内Na量を上回る水の貯留により血液が希釈される場合に起きる。具体的には心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、腎不全などが挙げられる。

ECF減少の低Na血症

これは水の喪失に加え、Naがそれ以上に減少する場合に起きる。具体的には嘔吐、下痢、熱傷、急性膵炎などの腎外性Na喪失と、慢性腎炎や間質性腎炎などの腎性Na喪失がある。

ECF不変の低Na血症

浸透圧調整系の異常により血症浸透圧低下をきたす場合に起きる。具体的にはSIADH、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症、心因性多飲症などが挙げられる。

-内分泌科

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