敗血症の原因、症状、診断、治療

投稿日:2017年12月5日 更新日:

敗血症とは、感染症によって生命を脅かすほど重篤な臓器障害が引き起こされる状態である。2016年に改訂された「敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義第3版(Sepsis-3)」で、従来の敗血症の病態の捉え方が変わっており、診断基準に全身炎症性証拠群(SIRS)が消えて、代わりにSOFAスコアが採用されるようになった。

敗血症の原因

敗血症は、感染によって誘発される免疫応答によって引き起こされる。最も一般的な原因としては、細菌感染であるが、真菌、ウイルス、寄生虫の場合もある。黄色ブドウ球菌(MRSA)や化膿性レンサ球菌、緑膿菌、大腸菌、クレブシエラなどが起因菌として挙げられる。一次感染巣としては、肺炎、尿路感染、腹腔内感染のみで75%、全敗血症例の50%が肺を原発巣としていると考えられている。

敗血症の主な感染巣と原因菌

肺炎 肺炎球菌
腹部・骨盤 クレブシエラ、大腸菌、バクテロイデス、腸球菌
腎盂腎炎 大腸菌、クレブシエラ、緑膿菌
胆嚢炎・胆管炎 大腸菌、クレブシエラ、バクテロイデス
中心静脈カテーテル感染 黄色ブドウ球菌(MRSA)、カンジダ
髄膜炎 肺炎球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ桿菌

感染の原因菌としては、大腸菌を主とした腸内細菌群 34.4%、黄色ブドウ球菌 30.1%、緑膿菌 28.7%、コアグラーゼ陰性ブド
ウ球菌 19.1%,カンジダを主とした真菌 17.1%となっている1)

敗血症の症状

発熱や頻脈、尿量低下、高血糖、warm shock(暖かい皮膚)は敗血症において最初に見られる症状である。特に血圧は予後を規定する重要な因子であり、血圧が低下してきたときに初期に補正できなければ、敗血症性ショックの所見として知られるcold shock(冷たい皮膚)、急性腎不全、肝障害など多臓器不全を呈する播種性血管内凝固(DIC)の併発などをきたすリスクが上がる。

敗血症による末梢寒流の低下が起きると、好気性から嫌気性への代謝に変化するため、乳酸の蓄積をきたす。乳酸とサイトカインの増加によって呼吸中枢が刺激され多換気となり、呼吸性アルカローシスをきたす。代謝性アシドーシスは血圧低下の直前や同時に起こり、致命的な経過へとつながる最初のサインと理解すべきである。したがって、この段階でより早期に治療できれば、迅速な回復につながる。

敗血症の診断

敗血症の診断は、2016年に改訂された「敗血症および敗血症性ショックの国際コンセンサス定義第3版(Sepsis-3)」によって病態の捉え方が変わっている。従来では、「全身性炎症反応症候群(SIRS)+感染症」が敗血症の定義であったが、現在はSOFAスコアが採用され敗血症は「感染症にかつSOFAスコアが2点以上によるもの」と定義されるものとなっている。

0点 1点 2点 3点 4点
呼吸 PaO2/FiO2 [mmHg] ≧400 <400 <300 <200(+呼吸補助) <100(+呼吸補助)
凝固能
血小板数 [×103/mm2]
≧150 <150 <100 <50 <20
肝機能
血漿Bil値 [mg/dL]
<1.2 1.2〜1.9 2.0〜5.9 6.0〜11.9 >12
循環
血圧低下
平均動脈圧 ≧70 mmHg 平均動脈圧 <70 mmHg ドパミン≦5 orドブタミン投与 ドパミン>5 orアドレナリン≦0.1 orノルアドレナリン≦0.1 ドパミン>15 orアドレナリン>0.1 orノルアドレナリン>0.1
中枢神経機能(GCS) 15 13〜14 10〜12 6〜9 <6
腎機能
Cr値 [mg/dL]
<1.2 1.2〜1.9 2.0〜3.4 3.5〜4.9 or 尿量<500mL/日 >5.0 or尿量<200mL/日

また、敗血症をより簡便にスクリーニングする指標として、ICU外(一般病棟、救急外来、急性期病院以外の場)ではquick SOFA(qSOFA)スコアが採用されている。

quick SOFA(qSOFA)

  • 呼吸数 22回/分以上
  • 意識レベルの低下(GCS13未満)
  • 収縮期血圧 100mmHg 以下

qSOFAスコアが2点以上であれば敗血症を疑い、臓器障害の評価を行うことが推奨されている。このとき、十分な輸液負荷にもかかわらず、平均動脈圧65mmHgを維持するために昇圧薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/Lを超えている場合は敗血症性ショックと診断する。

図:敗血症、敗血症性ショックの判別手順2)
敗血症,敗血症性ショックの判別手順

敗血症の治療

敗血症の早期の診断と集中管理によって、アウトカムが大きく変わってくる。最初の3時間以内に、低血圧や組織の末梢寒流の低下を認めたら速やかに推定される起因菌をカバーしうる広域の抗菌薬と生理食塩水による輸液を開始する(乳酸値の上昇が目安)。

また腹部や骨盤内にドレナージ可能な感染部位がある場合や壊死性の感染症の臨床所見などがある場合は、ただちに外科にコンサルトする必要がある。留置されているカテーテルはいかなる物であっても必ず抜去し、培養をとり原因菌と思わしきものがないかを確認する。

血圧低下に対しての昇圧薬は適切に用いる必要があり、ドパミンから始めノルアドレナリンへ進む(ただしドパミンは血管を拡張し血圧低下を招くこともあるためノルアドレナリンから投与する場合もある)。肺うっ血がある場合は積極的な輸液を避ける。

敗血症性ショック

敗血症性ショックとは、敗血症による急性循環不全を起こし、輸液による初期治療に反応せず、細胞障害および代謝異常が重度となり、死亡率を増加させる可能性のある状態のことをいう。感染症かつSOFAスコアが2点以上で敗血症と診断され、さらに平均動脈圧65mmHgを維持するために昇圧薬を必要とし、かつ血清乳酸値が2mmol/Lを超えている場合は敗血症性ショックと診断される。

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