アポトーシスとネクローシス

  アポトーシス ネクローシス
概念 生理的刺激により、不要になった細胞で個体をより良くするために起きるあらかじめプログラム化された積極的な細胞死のこと 紫外線や高温、酸などの刺激により起きる受動的な細胞死のこと。イオンの恒常性の障害、リソソームからの溶解酵素の漏出が起き、周辺組織にまで炎症が広がる
断片化(ミトコンドリアは変化なし) 膨化(ミトコンドリアも崩壊)
DNA断片化 180塩基ごとのヌクレオソーム単位 ランダムな断片化
形態変化 細胞の収縮と断片化が起きた後、アポトーシス小胞が形成され、マクロファージに貪食される。 小胞体やミトコンドリアなどの膜構造が膨張し、細胞膜が溶解して細胞小器官が漏れ出ながら周辺細胞に炎症を波及させる
炎症 +

アポトーシスはプログラム化された細胞死

アポトーシスは身近な例で言うと、カエルの発生過程におけるオタマジャクシの尾の消失や脊椎動物の指の間の水かきが胚の発生中になくなる現象などが挙げられる。それ自体が起きることは病的ではなく、個体をより良くするために発生過程であらかじめプログラム化されて起こっている。遺伝子変異を起こした細胞を除去するためにも働いている。

このアポトーシスに外的、内的な異常が加わると、我々の体にはウイルス感染や膠原病、悪性腫瘍、AIDS、虚血性疾患、神経変性疾患などさまざまな病気が引き起こされる。たとえばAIDSでは、免疫系で最も重要なヘルパーT細胞のアポトーシスの異常亢進によって宿主免疫力の低下が起きていると考えられている。

アポトーシスの開始は、DNA損傷などによりp53という癌抑制遺伝子が、ミトコンドリア上のBax、Bakなどのタンパク質からなるシグナル系の抑制を制御し、ミトコンドリアからシトクロムcを放出させることから始まっている(図1参照)。

少量放出されたシトクロムcは小胞体膜上にあるIP3受容体と相互作用し、小胞体からカルシウムを放出させる。このプロセスにより、カルシウムは細胞毒性を起こすまでに上昇し、今度はカスパーゼ9と呼ばれるシステインプロテアーゼを活性化する。カスパーゼ9はカスパーゼ3を活性化し(カスパーゼカスケード)、最終的にアポトーシスを引き起こす。

または、TNF(腫瘍壊死因子)やFasリガンドなどのサイトカインによる細胞外からのシグナルにより、デスリガンドがデスレセプターに結合し、カスパーゼ3を活性化する経路などが考えられている。

図1:アポトーシス開始の機序

ネクローシス(壊死)の機序

ネクローシスは、アポトーシスと異なりあらかじめプログラム化されているわけではなく、細胞膜の破壊、酸素欠乏などによって起きる受動的な細胞死によるものである。たとえば熱傷による皮膚壊死や心筋梗塞などもネクローシスである。

また、最近の研究ではネクローシスが単に偶発的に起きるものではなく、プログラム化されたものもあるということで、ネクロトーシス(ecroptosis)と呼ばれることもある。

図2:ネクローシス(壊死)とアポトーシスによる細胞の死
アポトーシスとネクローシス

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